Biophilia 3

特集: 新しい医療のかたち
―医療材料の世界―

      

近年、理学、工学分野との融合が活発化し、医学が新たな展開を見せている。現代医学は、多くの分野から最新の知識、技術を導入して先端的な医療を生み出している。一方、高齢化社会に対応してより安全で機能性の高い医療材料、医療器具の開発が望まれている。本特集では、痛んだ組織や臓器の再生を引き出す手法、失われた骨や歯を取り戻す技術といった再生医療やナノテクノロジーを駆使した安全で安心な最新の医療技術開発を紹介する。新時代の医科学のかたちがここにある。

(特集編集担当:小林英司)

もくじ

【巻頭エッセイ】科学者・技術者の夢

ステロイドホルモンのはたらきを理想的にコントロールする
加藤茂明(東京大学分子細胞生物学研究所/ERATO・JST)

【特集】新しい医療のかたち―医療材料の世界―

体を自然に修復する力を引き出す技術
―生体組織の再生誘導のための医療材料技術:生体組織工学―
田畑泰彦(京都大学再生医科学研究所 生体組織工学研究部門)
人工臓器を用いた再建外科治療と、臓器移植との2大先端外科治療は、これまでに多くの患者の生命を救ってきたが、拒絶反応や、臓器の慢性的な不足、免疫抑制剤の服用による副作用など治療技術の限界点も見えてきている。そこで第3の治療法として期待されているのが、再生誘導治療(再生医療)である。本稿では、これまでの治療法の欠点を補い、適用を広げるだけではなく、新しい治療法を提案する可能性もある再生医療の基盤となる技術「生体組織工学」について紹介する。
細胞から臓器を蘇らせる技術
―細胞シート工学による臓器再生―
増田信奈子、岡野光夫(東京女子医科大学先端生命医科学研究所)
再生医療の基盤技術となるのが組織工学(ティッシュエンジニアリング)である。この手法を用いることによって、細胞ソースを構造的・機能的に必要十分な組織や臓器の形へとデザインすることが可能となる。本稿では、組織工学的手法を用いた、角膜、心筋などの組織再生を紹介する。
失われた骨、歯を取り戻す
―人工骨・人工歯根の新材料―
樋口裕一(大阪歯科大学付属病院)、中嶋英雄(大阪大学産業科学研究所)
失われた生体組織を取り戻すために、生体材料を用いた修復が主流となっている。骨や歯など負荷がかかる組織には、その負荷に抵抗できる生体材料と再生医療の組み合わせの開発が期待される。本稿では、金属やセラミックスを中心に行われている人工骨、人工歯根の開発について、また、次世代のインプラント開発について紹介する。
骨を生まれ変わらせる
―人工骨による骨組織再生―
海渡貴司、名井陽、吉川秀樹(大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(整形外科))
人工骨による骨再生は、骨形成細胞の伝導により再生させる受動的な再生の時代から、骨形成細胞を組み合わせることで積極的に骨組織を再生させる時代に進んでいる。本稿では、人工骨に分子化学、および組織工学の技術を組み合わせた新たなバイオマテリアル「セラミックス人工骨」を用いての骨再生、また、組織工学的手法を用いた骨再生について紹介する。
ナノテクノロジーでやさしい医療
―マイクロ・ナノ技術による医用デバイスの開発―
芳賀洋一(東北大学先進医工学研究機構(TUBERO))、江刺正喜(東北大学大学院工学研究科)
体を大きく切開せずに、カテーテルや内視鏡などを用いた低侵襲医療が広く行われている。このような医療には、細かく、小さくとも精度よく、さまざまな機能が実現できることが求められている。最近では、ナノレベルの微細加工技術による、より高度な機器の開発が可能となってきた。本稿では、次世代の医療機器を目指したデバイスを中心に、最近の微細加工技術と新しい材料を用いた低侵襲医療機器について紹介する。

【連載】

最新実験技術 連載第3回
無拘束実験技術―古くて新しい技術―
ラット持続胆汁採取とその応用
―飲水に"生食"を使うのがコツ―
水田耕一(自治医科大学 移植外科)
最新実験技術 連載第3回
無拘束実験技術―古くて新しい技術―
マウス持続胆汁採取
―ヒトの胆汁を分泌するマウス―
添野吉徳(中外テクノス株式会社)、堀江透(株式会社フェニックスバイオ)
ヒトと動物の共生へ 第3回ヒトとウマの新しい関係
―ヒポセラピー―
局博一(東京大学大学院農学生命科学研究科)
臍帯血物語 第2回物語のはじまり
高橋恒夫(東京大学医科学研究所 細胞プロセッシング研究部門)

【コラム】

日米の教育、研究に対する価値観の違いから見える日本の課題
倉地幸徳(産業技術総合研究所 年齢軸生命工学研究センター)

【総説】

アズマモグラとコウベモグラの戦い
―在来哺乳類に見られる種間競合―
岡本宗裕(鳥取大学農学部)
医学を支えるバイオエンジニアリングの発展
谷下一夫(慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科)
中国に実験動物福祉法制定の動き
―中国の現状―
劉陽(慶應義塾大学医学部・中国医科大学)

【インフォメーション】

官庁インフォメーション
動物愛護管理法改正にあたっての動き
農林水産省の薬剤耐性菌問題における獣医療分野でのリスク管理への取り組み

トラックバック(0)

トラックバックURL: https://www.adthree.com/type/mt-tb.cgi/95

アドスリー書籍の購入はこちらから!

電子版含む雑誌・書籍の購入

Facebook now!

この巻号について

第1巻 第3号 (通巻3号)

Biophilia 3

特集: 新しい医療のかたち
―医療材料の世界―

発行日: 2005年9月 1日

前後の号

これまでに発行されたビオフィリアの一覧はインデックスページで見ることができます。