Biophilia 1

特集: 時間とヒトと動物 ―時は流れる―

      
不老不死。これは人類が太古から抱いてきた夢であり、それを実現することは生命科学の究極の目標の1つといえる。本特集では、寿命はいかにして決定され、なぜ動物によって異なるのか、そして、老化はなぜ起こり、また、それを抑えることはできるのか、さらに、時を感じるしくみについてそれぞれを最新の研究から探り、不老不死という夢の実現可能性に迫る。

(特集編集担当:星 信彦)

もくじ

【巻頭エッセイ】科学者・技術者の夢

第四の価値の実現へ
北澤宏一(科学技術振興機構 理事)

【特集】時間とヒトと動物―時は流れる―

時空と納得
養老孟司(北里大学大学院医療人間科学教授、東京大学名誉教授)
時間という概念はどこから来たのだろうか。カントはこれを空間とともにア・プリオリとした。つまりヒトの認識にはじめから備わっているとしたのである。
時間のない音はないし、空間のない像はない。ところが概念、つまりヒトの使う言葉は、視覚と聴覚に共通である。それなら、時間と空間という概念は、言葉の基礎として前提されなければならない。さもないと、視覚と聴覚に共通のものとしての言語が成り立たないからである。
というふうな説明は、一般性がない。どういう意味で一般性がないのかというと、なかなか理解してもらえないからである。このあたりが、ヒトの脳の面白いところである。
不老不死の夢
宮嶌宏彰(株式会社新日本科学)
不老不死は人類がこの世に生を受けてから、今日に至るまで願い続けてきた夢であろう。我々は生と死の狭間で生活しているが、死については、物理的、化学的な手段などさまざまな手段を手にしてきた一方、生存し続ける手段は手に入れることができていない。本稿では、老化、寿命のしくみから、不老不死実現の可能性を考える。
ヒトと動物の寿命
篠田元扶(獨協医科大学実験動物センター)
寿命を決定するのは何か? 本稿では、「子どもの数が少ないほうが長寿である」「体が大きいと寿命が長い」「適度な運動負荷は寿命を延ばす」「適度なストレスは寿命を延ばす」「早熟だと寿命が短い」など、これまでに出されてきた寿命に関する学説のおもなものを取り上げ、寿命決定のしくみを探る。
老化遺伝子を追う
―染色体移入による細胞老化関連遺伝子の探索―
押村光雄・中山裕二(鳥取大学大学院医学系研究科)
ヒトをはじめ、各種動物の正常細胞の多くは分裂回数に限りがある。一定回数の細胞分裂のあと、分裂が停止する現象を「細胞老化」とよぶ。本稿では、最近の遺伝子研究研究の成果から、細胞の分裂限界を決める要因、老化の原因を追う。
皮膚の老化を追う
―皮膚内部で何が起こっているか―
天野聡(資生堂ライフサイエンス研究センター 皮膚科学研究所)
しわ、たるみはどうして起こるのか、皮膚の老化はいつ頃から始まるのだろうか。皮膚の老化は、皮膚が直接外部に接する器官であるため、乾燥、酸化、紫外線の3大環境因子の影響を受けている。その中でも紫外線が最も大きな影響を皮膚に及ぼしている。本稿では、しわ、たるみが顕在化する前に、紫外線の影響を受けて皮膚内部がどう変化したかに関する最新の知見と皮膚内部で起こる変化への対処法について紹介する。
時を刻む脳
本間研一(北海道大学大学院医学研究科統合生理学講座)
バクテリアからヒトに至るまで、地球上に棲むほとんどすべての生物は1日の時刻を知る能力をもっている。この能力が進化した事実、そして多くの生物で保存されている事実から、時刻を知ることが種の生存にいかに重要であるかがわかる。本稿では、時を刻む脳-生物時計-について、その生理的意義と研究の到達点を紹介する。

【連載】

最新実験技術 第1回
種々の発光色を利用したin vivoバイオイメージング
Green Fluorecent Protein(GFP)を利用した好中球の可視可
榎本亜紀、佐藤友紀、小林英司(自治医科大学)
最新実験技術 第1回
種々の発光色を利用したin vivoバイオイメージング
Red Fluorecent Protein - DsRed2を利用した肝細再生研究
五十嵐友香、佐藤友紀、小林英司(自治医科大学)
臍帯血物語 第1回臍帯血バンクの今
高橋恒夫(東京大学医科学研究所細胞プロセッシング研究部門)
ヒトと動物の共生へ 第1回アニマルセラピーとは
―のぞみ牧場学園における発達障害児への「アニマルセラピー」の実践と課題―
津田望(のぞみ牧場学園施設長 臨床言語士)
若き教授が熱く語る「研究論文の書き方」第1回研究論文を書く工夫
室原豊明(名古屋大学大学院医学系研究科)

【総説】

中国におけるSARS研究の現状
孔琪、秦川(中国協和医科大学 中国医学科学院実験動物研究所) / 訳:劉陽
医薬品の毒性評価、その未来
―実験動物と動物試験の展望―
井上達(国立医薬品食品衛生研究所)
実験動物の飲料水について
夏目克彦(株式会社夏目製作所)

【コラム】

動物実験をもっと話題にしたい
清水弟(朝日新聞記者)

【インフォメーション】

官庁インフォメーション

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この巻号について

第1巻 第1号 (通巻1号)

Biophilia 1

特集: 時間とヒトと動物 ―時は流れる―

発行日: 2005年3月 1日

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