Biophilia 13

特集: 「環境遺伝子」研究の最前線(1)
―環境汚染と健康、人類の未来は大丈夫?―

      

環境汚染問題も含め、環境中微量化学物質に囲まれたこの地球上での我々の生活は、果たして問題ないのだろうか。あるいは、野生生物に影響が出ても、構造の違う高等生物、人間には明らかな毒性が認められないから問題ない、と片づけてよいのだろうか。

「環境汚染と健康」問題は未来(次世代)に先送りしてはならない、「疑わしきは罰せず」ではすまされない、それが今回のテーマ。

国には国の、企業には企業の方針があり、次元の異なるところでものごとが取り決められていることは歴史が物語っている。薬害問題がいい例だが、後になってやはり「あれは毒でした」ではいつまでたっても同じ歴史の繰り返しになってしまう。ただ、そういう部分もこのビオフィリアにしっかり残しておく、というのであれば、それも本誌の使命かも知れない。

一般に胎子および新生子は成体と比べて薬物等への感受性がきわめて高く、内分泌かく乱化学物質が不可逆的に脳あるいは生殖機能を障害する可能性が示唆されている。内分泌かく乱化学物質の作用メカニズムの解明は、分子生物学的知見を基に新しい時代に入ったといえるが、器官形成・発達時期である胎子・新生子期での内分泌かく乱化学物質曝露が、長期にわたって不可逆的にフィードバック機構の破綻を招来する作用機序については不明な点が多い。さらに近年、細胞世代を超えて継承され得る、塩基配列の変化を伴わない遺伝子発現制御について研究する新たなパラダイムとして、エピジェネティクスの領域が提唱され、内分泌かく乱化学物質が生物系に及ぼす環境エピジェネティクスの展開が期待される。

本号では、環境化学物質が生態系や人間の健康へ及ぼす作用の分子基盤に関し、日本および世界の研究者がこれまでどのように取り組んできたのか、また、今後の行方について第一線でご活躍の方々にわかりやすく概説していただく。

(編集担当:星 信彦)

もくじ

【特集】「環境遺伝子」研究の最前線1―環境汚染と健康、人類の未来は大丈夫?―

化学物質の内分泌かく乱作用に関する環境省の取り組み
―総合戦略ExTEND2005の推進―
木村博承(環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課)
内分泌かく乱化学物質研究の世界的動向
井上達(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
内分泌かく乱物質が及ぼす発生、成長への影響
井口泰泉、中村武志(自然科学研究機構 基礎生物学研究所 岡崎統合バイオサイエンスセンター)
ダイオキシン類の環境汚染に伴う野生生物への影響
―野生生物におけるAHR-CYP1Aシグナル伝達系の種多様性―
岩田久人、金恩英(愛媛大学沿岸環境科学研究センター生態毒性解析分野)
ゼブラフィッシュで観たダイオキシン毒性発現のメカニズム
寺岡宏樹(酪農学園大学獣医学部 毒性学教室)
ポリ塩化ビフェニルによる器官の発達、機能維持への影響
―甲状腺ホルモンを介するPCB類の作用機構―
鯉淵典之、岩崎俊晴(群馬大学大学院医学系研究科医科学専攻 器官機能学分野)
母体へのダイオキシン曝露が新生児に影響をもたらすメカニズム
西村典子(独立行政法人 国立環境研究所環境リスク研究センター)

Biophilia 鼎談

こんな生徒が医学部を目指してほしい
―日本の医療の未来のために
井村裕夫((独)科学技術振興機構)、吉田則彦(智辯学園和歌山小学校)、小林英司(自治医科大学)

【連載】

ヒトの心の発達とその精神病理の理解を目指して 第3回脳の形態から統合失調症を明らかにする
鈴木道雄(富山大学大学院医学薬学研究部神経精神医学講座)
ヒトの心の発達とその精神病理の理解を目指して 第3回遺伝子操作マウスを用いた情動制御機構の解析
井上蘭、森寿(富山大学大学院医学薬学研究部)
ヒトと動物の共生へ 第11回軽井沢ベアドッグ物語
―人とクマとの親善大使になれるか?―
田中純平(特定非営利活動法人ピッキオ)
化学進化論で探る生命起源 第3回地球外物質に見る化学進化の形跡と地球外生命
村江達士(九州大学名誉教授)
生き物たちに向けてきたまなざし 第3回ナチュラルデータと取り組んだ歴史
3 自然観に時間軸が導入される
西村顯治(慶應義塾大学名誉教授)

【総説】

ブタのしぐさと賢さの神経機構に迫る
―ブタの脳科学―
齋藤敏之(独立行政法人農業生物資源研究所)
「植物医師」の養成と「植物病院」ネットワークの構築を目指す
―植物医科学の展開―
難波成任(東京大学大学院農学生命科学研究科)
光環境が早産児・新生児の脳に与える影響
―新しい光受容体「メラノプシン」のもつ意味―
太田英伸(東北大学病院周産母子センター)
someone-Biophilia連動企画環境の変化が引き起こすミジンコの変化
―水環境の変化により赤くなるミジンコ―
時下進一(東京薬科大学生命科学部環境ゲノム学科)
someone-Biophilia連動企画さらなる広がりを見せる「教育応援プロジェクト」
教育応援プロジェクト公式サイト(株式会社リバネス)

【インフォメーション】

海外科学雑誌情報 Silva Scientiae VI
久原孝俊(順天堂大学大学院医学研究科アトピー疾患研究センター)
Capsula Verborum
1塩基多型 : single-nucleotide polymorphism (SNP)
狩猟採集民族 : hunter-gatherer
オーダーメイド医療 : personalized (customized, tailormade) medicine
クローンヒツジ「ドリー」 : Dolly the Sheep
人工多能性幹細胞 : induced pluripotent stem (iPS) cells
活動銀河核 : active galactic nuclei (AGN)
結晶学者 : crystallographer
膜貫通型のGタンパク質共役受容体 : membrane-spanning G protein-coupled receptor (GPCR)
半導体 : semiconductor
遷移金属酸化物 : transition metal oxide
テルル化水銀 : mercury telluride (HgTe)
量子スピンホール効果 : the quantum spin Hall effect (QSHE)
病原体 : pathogen
樹状細胞 : dendritic cell
ムネーモシュネー : Mnemosyne
ミューズ : Muse(s)

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この巻号について

第4巻 第1号 (通巻13号)

Biophilia 13

特集: 「環境遺伝子」研究の最前線(1)
―環境汚染と健康、人類の未来は大丈夫?―

発行日: 2008年3月10日

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