Biophilia 7

特集: 光で生体をとらえる
―光とナノテクノロジーを利用した生体観察・計測技術―

      

生命現象を光で照らす

光技術は、日本が世界をリードしてきた分野である。その光技術が新たな地平を切り拓こうとしている。光は、従来から生体にやさしいといわれてきたが、長い間、光はその性質からナノスケールのものは見ることができないと信じられてきた。しかし、その壁を乗り越えることで、光を用いての観察、計測技術は新たなステージを迎えている。

本誌では、連載「最新実験技術」にて「バイオイメージング」技術を生命科学の未来を考える手段として紹介してきたが、これまではフルオレッセンス、ルミネッセンスを用いてのWhole-body観察、すなわち動物などを“丸ごと”イメージングして、臓器や細胞の活性などを見る最新技術を紹介してきた(ビオフィリア4、5、6号)。

今回は、光技術(フォトニクス)とナノテクノロジーを用いて細胞・組織を“分子レベル”で観察する技術の開発と手法を紹介する。大阪大学の河田先生には、光による分子イメージングの領域について本特集のリードとして総説していただいた。東京大学の内藤先生らには、ラマン分光を、京都府立医大の高松先生には多光子励起をそれぞれ用いた技術を解説いただいた。最後に大阪大学の藤田先生には非線形光学現象を概説していただいた上で超短バルスレーザー技術について解説していただいた。いずれも我が国の本方面の第一人者による総説であるが、カラー写真をふんだんに載せ“光”の特集にふさわしくアレンジした。

(編集担当:小林 英司)

もくじ

【巻頭エッセイ】科学者・技術者の夢

創薬の夢、生命科学の夢
桜田一洋(日本シエーリング株式会社リサーチセンター)

【巻頭言】生命科学の進展に寄せて

科学の進展のためにしっかりとした未来図を
井村裕夫(独立行政法人科学技術振興機構 顧問)

【特集】光で生体をとらえる―光とナノテクノロジーを利用した生体観察・計測技術―

ナノ光学で生体を見る
―ナノスケールの分解能をもつ光学顕微鏡の開発と分子イメージング―
河田聡(大阪大学大学院工学研究科応用物理学専攻、理化学研究所)
ラマン分子光で見る分子レベルでの生命活性
―細胞物理化学事始め―
内藤康彰、黄郁珊、濵口宏夫(東京大学大学院理学系研究科化学専攻)
光で生体の機能をより高い空間的・時間的分解能で捉える
―2光子顕微鏡によるタンパク分子機能の計測・制御―
高松哲郎(京都府立医科大学大学院医学研究科細胞分子機能病理学)
新しいレーザー技術と光学現象の生体観察への応用
―超短パルスレーザー技術を用いた生体の観察・操作・加工―
藤田克昌(大阪大学大学院工学研究科精密科学・応用物理学専攻)

【連載】

最新実験技術 第7回光と磁気のin vivoイメージング
―1分子計測をヒトの臨床へ―
田村守(北海道大学大学院先端生命科学研究院 先端細胞機能科学分野)
東洋医学と生命科学の融合を目指して 第2回和漢薬と腸内細菌のかかわり
服部征雄(富山大学和漢医薬学総合研究所)
東洋医学と生命科学の融合を目指して 第2回更年期障害例、婦人科癌症例に対する東洋医学、西洋医学に基づく個の医療の創生
日高隆雄、斎藤滋(富山大学医学部産科婦人科学講座)
臍帯血物語 最終回臍帯血移植とバンクの洋々たる未来
高橋恒夫(東京大学医科学研究所細胞プロセッシング研究部門)
ヒトと動物の共生へ 第6回北の空から海ワシを失わないために
―オオワシ・オジロワシとの共存を目指して―
齋藤慶輔(猛禽類医学研究所・北海道ラプターリサーチ 代表・獣医師)
若き教授が熱く語る「研究論文の書き方」第5回研究を行う上での心構えと論文作成のノウハウ
―人参類生薬について
原英彰(岐阜薬科大学生体機能分子学講座)

【総説】

不死身の生物? クマムシの不思議な世界
鈴木忠(慶應義塾大学医学部生物学教室)
人工臓器から再生医療へ
大野邦夫(株式会社ビーシーエス 監査役)
フグ毒の謎を探る
野口玉雄(東京医療保健大学医療栄養学科)

【インフォメーション】

官庁インフォメーション

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この巻号について

第2巻 第3号 (通巻7号)

Biophilia 7

特集: 光で生体をとらえる
―光とナノテクノロジーを利用した生体観察・計測技術―

発行日: 2006年9月 1日

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