Biophilia 17

特集: 毒のサイエンス

      

「毒」と「薬」は表裏一体の存在である。毒は、からだにとって「害」、薬は「益」、と言葉の意味はまったく逆だが、どちらも「生体に影響を与えるもの」であり、科学的には同じものとして捉えることができる。猛毒に含まれる物質を麻酔などの薬として利用することもあるし、特殊な物質に限らず、身の回りに存在する物質も摂取量次第では毒となる可能性がある。人間の言葉も時として、他人に対しての良薬になることもあれば、精神に作用する毒となることもある。

本特集では、生き物が体内に持つ毒についてまとめた。生物が持つ毒は、身を守るためや、進化の過程で身につけたもの、外部から取り込んだものなどさまざまなものがあるが、毒を持つ理由や自らの毒におかされないわけなど、まだよくわかっていないことも多い。今回は、毒を持つことがよく知られている、フグ、ヘビ、クモ、キノコに加えて、毒を持つことがあまり知られていないウニ、さらに、トガリネズミ、カモノハシといった毒を持つ哺乳類を取り上げ、生き物が身につけた毒の謎に迫る。

もくじ

【巻頭言】生命科学の進展に寄せて

食の「安全・安心」における科学者の役割
唐木英明(日本学術会議 副会長(国際担当))

【特集】毒のサイエンス

毒と薬のはざま
海野隆(日本トキシコロジー学会 理事)
毒をためこむ不思議な魚・フグ
―生命科学によるフグ毒の謎へのアプローチ―
山下まり(東北大学大学院農学研究科)
ウニ類の棘には毒がある
―糖鎖を認識するタンパク質毒素―
中川秀幸(徳島大学総合科学部)
毒をもって身を守る?
―ヘビ毒の科学―
三島章義
トガリネズミ、カモノハシ毒の謎に迫る
―哺乳類の持つ毒の科学―
北将樹(筑波大学大学院数理物質科学研究科)
クモの毒を科学する
池田博明(日本ハエトリグモ研究センター)
まだまだ見つかる毒キノコ
―日本におけるキノコ中毒―
横山和正(滋賀大学名誉教授)

【総説】

DNA鑑定で偽装牛肉を切る!!
―牛肉の科学―
万年英之(神戸大学大学院農学研究科)
NBRP紹介ラット
―ヒトのモデルとしての活用―
芹川忠夫(京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設)
NBRP紹介広義キク属
―ゲノム攪乱とリソースの役割―
谷口研至(広島大学)、中田政司(富山中央植物園)、草場信(広島大学)
エイズの基礎知識
山本直樹(国立感染症研究所エイズ研究センター)
someone-Biophilia連動企画植物の"漬けもの"化石から探る世界と自分
―諸君は何を探していますか?
西田治文(中央大学理工学部生命科学科)

【連載】

インスリンの発見から糖尿病治療薬の開発へ 第3部糖尿病治療薬の開発状況と将来展望
池田衡(株式会社新日本科学)

【インフォメーション】

海外科学雑誌情報 Silva Scientiae X
久原孝俊(順天堂大学大学院医学研究科アトピー疾患研究センター)
Capsula Verborum
胚性幹細胞 : embryonic stem cell (ES cell)

人工多能性幹細胞 : induced pluripotent stem cell (iPS cell)

筋萎縮性側索硬化症 : amyotrophic lateral sclerosis (ALS)

筋ジストロフィー : muscular dystrophy

ダウン症候群 : Down syndrome

太陽系外惑星 : exoplanet

ドップラー偏移法 : Doppler shift technique (視線速度法 : radial-velocity technique ともいう)

ホット・ジュピター : hot Jupiter

マイクロレンズ法 : microlensing

コロナグラフ : coronagraph

波面補償光学 : adaptive optics

フォーマルハウト : Fomalhaut (魚座の口の部分に位置する1等星)

膠芽腫 : glioblastoma

高温超伝導体 : high-temperature superconductor

絶対零度 : absolute zero

凝縮系物理学 : condensed-matter physics

プロテオミクス : proteomics

再生可能エネルギー : renewable energy ( recyclable energy ともいう)

燃料電池 : fuel cell

陽子 : proton

クォーク : quark

グルーオン : gluon

格子量子色力学 : lattice quantum chromodynamics

ホラアナグマ : cave bear

ネアンデルタール人 : the Neanderthal
文部科学省「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」プロジェクト
継続4プロジェクトの紹介

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この巻号について

第5巻 第1号 (通巻17号)

Biophilia 17

特集: 毒のサイエンス

発行日: 2009年3月10日

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