Biophilia 19
特集: 生き物を形作るしくみ ―エピジェネティクス―
生物の体の形成は、遺伝子のみで決まるのではなく、生まれた後のさまざまな要因によって遺伝子の発現が変化していくことでなされる。ヒトの体を構成している60兆個の細胞は、基本的に同じ遺伝情報を持つが、それらがさまざまな組織、臓器へ発生・分化していくのは、その過程に、遺伝子をコードするアミノ酸配列の変化を伴わない情報記憶と発現のメカニズムがあるからである。このような遺伝子に指令を与え、発生・再生、がん、老化、遺伝などの(細胞の個性を確立・維持・消去する)生命現象に大きな影響を及ぼすメカニズムをエピジェネティクスという。
本特集を企画した背景には、最近、このエピジェネティクスの分子レベルでの研究が爆発的に進んでおり、現代の生命科学のめざましい進展の中でともすれば細分化されがちな研究分野を統合的に理解する共通学問基盤として、エピジェネティクスが重要な役割を担うようになった点が挙げられる。
本特集は、これまでのエピジェネティクス研究によって明らかになってきた「生命現象と疾患との関係」、「遺伝子発現制御のしくみ」、「生殖細胞や父母ゲノムの役割」、そして「哺乳類の進化」について、それらの研究のまさにトップにおられる研究者の方に最新の知見を集約し、わかりやすく紹介していただいた。
もくじ
【巻頭言】生命科学の進展に寄せて 特別編
【特集】生き物を形作るしくみ ―エピジェネティクス―
【総説】
【連載】
【インフォメーション】
Capsula Verborum
遺伝子改変動物 : genetically modified animals (genetically engineered animals 遺伝子操作動物ともいう)トランスジェニック動物 : transgenic animals
コモンマーモセット : common marmoset
増強型緑色蛍光タンパク質 : enhanced green fluorescent protein (EGFP)
体外受精 : in vitro fertilization (IVF)
マカク属サル類 : macaques
アカゲザル : rhesus monkey
ヒヒ : baboon
ハンチントン病 : Huntington's disease
パーキンソン病 : Parkinson's disease
筋萎縮性側索硬化症 : amyotrophic lateral sclerosis (ALS)
アルツハイマー病 : Alzheimer's disease
新世界ザル : New World monkeys
旧世界ザル : Old World monkeys
陽電子放出断層撮影法 (PET) スキャン : positron emission tomography scan
黄斑変性症 : macular degeneration
費用便益分析 : cost-benefit analysis, cost-benefit assessment (CBA)